学園マーメイド
なんて馬鹿なんだろう、と思うのと同時に嬉しくてまた涙腺が緩んだ。
自分が泳げないことを分かっているくせに飛び込むなんて、下手すれば二人とも溺れていたかもしれないのに、と思いつつも笑顔が漏れた。
そしてその日は川上に泳げた事を告げ(すごく喜んでいた)、雪兎に寮に泊まる事を言い(感づいてるような口ぶりだった)、久しぶりに陸嵩の隣で眠ったのだった。
その日からほんの数日。
大会に出た私は優勝をこの手に勝ち取ったのだ。
「おめでとう!」
大会が全て終了すると、笑顔の川上が私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
ちょっと強い力にグラグラと脳天が揺れながらも笑顔で返す。
「川上さんのお陰です。大会新記録、叩き出しました」
「俺はちょっとアドバイスしただけだからね。これが、実力だよ蒼乃ちゃん」
今度は大きな手が包むように頭を撫でる。
いや、私の実力もあるのだろうが、川上がいなければ乗り越えられなかったものもある。
たくさん学んだものもある。
敬愛する、私の講師だ。
「蒼乃!」
「おめでとう、蒼乃」
「園田さん!」
陸嵩、雪兎、梅沢が口々に話し近寄ってくる。
お礼を言って笑顔を見せる。
水の中に入ってからの私は名のとおり自由だった。
感覚は鈍っていなかったようで、ちょっとアップをすれば以前と同じぐらいのタイムで泳げた。
確かにいつもの大会よりは緊張感と言うのを味わった気がしたが、優勝は確実だろうと思っていた(これは口に出さない)。