学園マーメイド
「俺の家に来る?」
心臓がどくりどくり、と音を立てる中で優しいトーンが聞こえる。
「1週間じゃん?その……ラビ先輩の家には1週間以上泊まっていたわけだし」
唇を少し尖らせて瞳を伏せる陸高を横目に少し笑った。
雪兎のところに行くこともその話を聞いた瞬間に思いついた。
だが、雪兎だってこの冬休みの間は実家に帰るだろう。時々、懐かしそうに母親の話をしていた。
私は深く溜息をついた。
「気持ちは嬉しい。そうしたいのもすごくある。……でも」
でも、逃げちゃいけない。
ずっとこの一年間で学んだこと。人と接することでも学んだこと。
本当の両親ではない人たち。
本当の家族ではない人たち。
私を認めてくれない、嫌悪の渦が巻くあの空間にいる人たち。
だけど、ずっとあの場所で生活してきたことは確かだし。
ここまで成長を遂げたのはあの人たちのお陰だと言うのは確かなのだ。
そのことに気づけたのも、陸嵩を初めとしたたくさんの人から教えてくれたからだ。
まだ、私はあの人たちと向き合えていない。
いい機会なのかも知れない。
「家に……、帰るよ」
微かに震えている声が、どうか気づかれませんように。
「うん、そうだね」
「向き合って、ぶつかってくるよ」