学園マーメイド
「……電話する」
「……うん」
「メールもする」
「……うん」
「苦しかったり、悲しかったり、辛かったりしたら蒼乃も電話して?」
陸嵩の手が私の手をとり、指がゆっくりと絡ませられる。
きゅっと軽く握られ、それをやんわりと握り返す。
「分かった」
「あ、でも、別にそれ以外の時に電話してもいいんだからね」
「はは、うん」
本当は気づいていたのだろう、私の体が震えていたことに。
手を握られて安心するかと思いきや、その逆で。
体は微かだったけど震えだし、瞳をつぶれば家の光景がありありと瞼の裏に映し出されて。
でも、彼は何も言わなかった。
優しく、暖かい手の平は“大丈夫、平気”そう伝えてくれている。
――――大丈夫。
彼がそう言ってくれると、大丈夫なるような気がする。
不思議な力、魔法みたいな力だ。
私は陸嵩に握られていない別のほうの手で心臓あたりをぐっと押さえつけた。
「陸嵩」
ゆっくりとか細い声で呼ぶと、彼は微笑を貼り付けながら此方を見た。
「光とも、ちゃんと向き合ってみる。……ちゃんと、話し合ってみる」
彼女の問題も、放っては置けない。
……自分の気持ち全てぶつけて、それがかえって彼女を傷つけたとしても、だ。
このままの状態でいいはずがない。
陸嵩の手を強い力で握ると、彼も同じぐらいの力で返してくる。
「分かった。俺は……、蒼乃の傍にいてもいい?」
「……一人で行ってくるよ。帰ってきたら話聞いてもらっていいかな」
「もちろん」
心配そうな、でも私を信じてくれている笑みが心を満たす。
陸嵩、その笑顔が私の自信につながるって知ってた?
……光との問題が解決したら話してみようかな(笑ってくれるといいな)。