学園マーメイド
私は一人、バスケ部の部室の前に立ち竦む。
心臓の音がはっきりと耳にまで届いて体の拘束を強めている。
ここに来る前、川上告げたことがある。
『溺れた日、私の頭を殴ったのは……友人です』
そう言うと川上は瞳を広げたかと思うと、真剣な顔(怖い)で此方を見た。
『どう言う事?……蒼乃ちゃんの友達が頭を殴って溺れさせたって聞こえるけど』
『川上さん、今からその友人と話をしてきます。後悔しないように、話し合ってこようと思います』
川上の問いに答えを返さなかった。
彼の声のトーンは低く、コーチに怒られるよりも体が硬直した。
確かにいきなりのカミングアウトに驚くのは無理もない。そして、その内容も詳しく話さない私に戸惑いも大きいだろう。
でも、分かって欲しい。
これは自分で解決をしなければいけないものだ。
周りの人間を巻き込んだとはいえ、当事者は私と、そして光だ。
『……言葉は悪いけど、お前を殺しかけた人間だぞ』
唸るような声に、ぎゅっと拳を握る。
『その友人がしたことは許されないことだと思います。でも、このままいけば友人も自分も苦しむことになります。……あたしは許したい、友人も自分も』
川上の鋭く光る瞳を見つめ返す。