学園マーメイド


開いたドアの向こう側。
私の瞳に映ったのは、もちろんバスケ部の人間。
その中に光の姿も見える。



「……何?部屋間違えてるんじゃないの?」



一人の女子部員が怪訝そうな顔とは裏腹に馬鹿にしたような声を出した。
だけどその女子部員には目がいかない。
瞳は一点を、……光を捉えたままだった。
光は私の見ると、一度大きく瞳を開き、ばつ悪そうに下に伏せた。



「光に用事があってきたんだ。光、ちょっと付き合って欲しい」



声が震えていないだろうか。
いや、震えていたに決まっている。
それでも虚勢を張って、彼女を見つめていなければ震えた足先から崩れ去ってしまいそうだ。
言葉に出してしまえば今までのこと全て、本当に嘘になってしまう気がする。
だけど、逃げないと決めたのだ。
光はベンチから腰をあげ、無言で此方に向かって歩いてきた。
そして、振り返って部員を見る。



「ごめんね、ちょっと行ってくる」



取り繕った言い方に部員は冷たい瞳で光を見つめていた。
彼女は此方に向き直ったが、いつものキラキラと輝く瞳は一度も私を見なかった。





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