学園マーメイド

「分からないよ」
「そうだよ！分かるわけない！」



ヒステリックな声と同時に、彼女の頬に涙が零れた。
その涙に胸の奥がぎゅっと縮小する。



「あたしはねぇ！１年からレギュラー貰っちゃって、その所為でみんなに冷たい目で見られて！それで……っ、どうにかしてみんなの機嫌を取らなくちゃと思って……っ」



ぼろぼろと歯止めがきかないように零れ落ちる涙たち。



「しかも……、ラビ先輩と仲良さそうなアンタにもムカついて！あたしの心と体はボロボロだった！だから元々利用してたアンタをもっと利用してやったの！そんなあたしの気持ちをアンタになんか分かるわけないのよっ！」
「うん」
「……っぅ……、アンタが……っ、アンタがぁ！」
「うん」



光の全部の気持ちなんて分からない。
でも、彼女が彼女なりに必死で一人じゃどうしようもない状況だったのは伝わってきた。
だけど……、その涙は後悔をしているからでしょう？
どんなことがあったにせよ、嫌がらせをしようと言った自分や、実行したことや、……私を殴った事も全部。
悔やんだんでしょう？
苦しんだんでしょう？
その涙は“偽り”じゃないんだって、分かる。

光が崩れ落ちるようにその場にへたりこんだ。
それを見下ろすような形で彼女を見る。



「うぅ……、アンタなんかっ、うぅ……っ」
「光。利用するのはかまわないよ。……あたしだけを利用しようとするならかまわない」



顔を覆って嗚咽を出す光と同じように床にしゃがむ。
そして無意識のうちに冷たい声が出ていた。



「巻き込んだ人間のこと、考えたことある？」