学園マーメイド


「私はこれからも陸嵩や雪ちゃんと一緒に居続ける。それを光に制限される筋合いはない」



視界には目を丸くした光の顔。



「でも、もしこれからその人たちに危害を加えるような事があったら……、許さないよ。ちょっとでも何かしたら、あたしは戦う。光、アンタと正面きって戦う」



今度は本当に脅しなのかもしれない。
ギラリ、と眼光を向けて口を閉じた。
光は荒々しく息を吸って吐くと、ぐっと唇をかみ締めて、また顔を手で覆った。

もう、……もういい。

瞳をゆっくり閉じると涙が幾粒も床に落ちた。
もう一度光を見ようと瞳を開けたが滲んでいてよく分からなかった。
一呼吸置いて立ち上がる。
ミシミシと今までの関係が崩れ落ちる音が聞こえた。

これで、これでいいのだ。

光に背を向けて、教室を後にしようとドアに手をかける。



「…………」



ああ、最後に一つだけ。
これだけ……。



「光……、声、かけてくれて……、ありがと……っ」



途切れた音。
それだけ言うとドアを開いて廊下に出る。
冷たい無機質な廊下を歩き出した。

苦しい、苦しい、苦しい。
終わりにするために光を呼んだのに、終わったことが悲しくてしょうがない。
傷つけた、悲しませた、苦しませた。
そうさせるために呼んだ。
でも、……やはり痛い(涙も痛い)。
感情の起伏が酷く激しくなった気がする。



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