学園マーメイド
Breath...14
Breath...14
『上手く言えないけど、これが新しい前進になる』
川上に光と決着がついた事の報告に行くと、優しい顔で彼はそう言った。
『辛いこと、悲しいこと、耐えること。たくさんあったと思う。だけど、それがこれからの糧になる。……糧に、なるんだ』
かみ締めるように、自分に言い聞かせるように言う川上を私はじっと見つめていた。
今までの川上とは少し雰囲気が違った気がした。
辛そうに、悲しそうに、何かに耐えるように。
どうかしたんですか、と問う前に川上はゆっくりと私の手を握り締めた。
そして、切なそうに瞳の奥を見つめられる。
『……蒼乃ちゃん、これから辛いことがあっても受け止める勇気を持ってほしい』
真剣な瞳が胸を指す。
『受け止められないくらい辛いことでも……、どうか受け止めてやってほしい』
言葉が出なかった。
喉元に詰まった返事は表に出る事無く、留まっている。
最後に川上は言った、“本当に君に会いたかったんだ”、と。
…………瞳が開いたのを感じて、今のが夢だったのだと実感した。
そして、目を開いてすぐに見えた天井の色がいつもとは違うのを認識する。
ああ、そうだ。ここは寮じゃない。
帰ってきたのだ……、私の箱庭に(血の通わない家に)。
真っ白な天井を見つめて大きく溜息をついた。
壁にかけてある時計は朝の5時を指している。
そしてこの家に帰ってきて2日、同じ夢を見ていた。
夢、と言っても実際に現実で起こった出来事をリピートのように見るのだ。