学園マーメイド
「あんたが真剣だって言う事は分かった。…じゃあさ」
バンビはまた一歩前に前進した。
「ゲームしようよ」
「……ゲーム?」
いきなりの発言に瞬きを数回繰り返した。
どんな流れてゲームになるのだろうと思ったが、この状況で持ちかけると言う事は“水泳部”が関わっている事だ。
私がどんなゲームだと聞く前にバンビは口を開いた。
「陸上競技で、俺に勝てたらもう何も言わない。負けたら、あんたが水泳部をやめる」
あまりにも理不尽なゲームにすぐに、うん、とは頷けなかった。
だけど、これを断るならいつかは息をする場所を奪われてしまうのは確実だ。
「競技種目は?」
「何でもいい。あんたが好きな競技で争ってやる」
上から目線の言葉に奥歯を噛み締める。
正直言わなくても陸上競技は得意な方ではない。
どんな競技を選ぶかで、生死が決まるようなものだ。
握り締めた拳を一層強く握り締め、瞳を伏せて、数秒頭の中で水泳部をやめる自分を想像して身震いした。
―――死んだ方がましだ。
「…短距離、100Mで勝負する」
目を開け、またしっかりとバンビの瞳を覗く。
彼はす、と目を逸らすと鼻から息を吐いた。
「分かった。勝負事は早い方がいいから、これからグラウンド出てやろう」
「今から?」
急な提案で、しかも実行するのも急過ぎて焦る。