学園マーメイド
興味がない、と言ったら反感を買っていると思われてしまうだろうか。
年末になると義両親と兄だけが行っていた行事のことも、この家や家業のこと。
そして、本当の両親のこと。
そんなの誰に聞けというの?
あの家で口答えをすることも、質問をすることも許されてはいなかった。
知りたい、と思っていた幼い時期を過ぎればもう何も思わなくなる。
教えてくれはしない、ならば聞いたって無駄。
知らないままでいい。私は私の世界だけを知っていればいい。
兄さえいればいい。それだけだった。
「知りません」
「そうか」
それに、招かなかったのはあなたなんでしょう?
「義父に良く言われていました。貴方は私のことが嫌いなのだと。だから、今こうして呼ばれている理由が分かりません」
いつもこの日から帰る度に、そして機嫌が悪くなるとすぐ“あの方はお前が嫌いなんだ”と言われていた。
傷ついたりショックを受けたりはしなかった。
“あの方”を見たことも会ったこともない私にはその言葉の重大さって言うのが理解できない。
当主は瞳を伏せて、隣に置いてあった水を飲んだ。
そして再び此方を見る。
「嫌い……、とは少し違うな。“憎い”のだ」
そう言ったあとの瞳は、やはり悲しそうで。
「……ごほっ……、今日は……、お前の母親の命日だ」
「母親の?」
命日、と言う事は亡くなってしまった血のつながりのある母親なのだろう。
と言うことは、いつもこの時期にこの家に義両親が行っていたのは命日だったからか。
当主は大きな咳をして続けた。
「尾神藤乃……、お前の母親だ」
家の家政婦も同じ名前を呟いていた。そして、似ていると。