学園マーメイド
何を言ったらいいのか……、ああもう!
こういう時、自分の言葉とお頭の足りなさに悔やむ。
一人でもんもんと考えていると当主はゆっくりと顔を上げた。
その顔はやはり穏やかで。
胸のもやもやがすっと飛んでいく気がした。
「私を許してくれるか?」
少し眉を下げて、当主は言った。
私は息を吐く。
「許すも何も。……直接貴方が手を下したわけじゃない。全て、成すがままに事が進んでいった結果です。謝ることも、許してもらおうとする事も、……しなくていいんですよ」
口元を少しつって笑顔を作った。
当主はそれを見て、細い目を丸くさせると、同じように小さく笑顔を見せた。
綺麗ごとかもしれないけど、今があるならそれでいい。
その間の過程は辛いことや悲しいこともだったけど、それで今の自分がいる。
それで今の愛すべき人たちがいる。
だったらそれでいいじゃないか。……これ以上は望まない。
「そうか。やはりお前に会って良かった。……良かったよ」
「……はい」
「今日はお前の母の命日だ。今まで離れていた分、たくさん話しをしてあげてくれ。きっと寂しかったと思う。藤乃もきっと蒼乃に会いたかっただろうから」
そう言った当主は父親のような、そしておじいちゃんのような顔をしていた。
答えるように頷いて、立ち上がると足が痺れていたようで、その場にヘロヘロと座り込んでしまった。
それを見て、当主は声を出して笑い、それにつられた私も声を出して笑ったのだった。