学園マーメイド

宴会は終わりを迎えた頃、奥の間を抜けた。
やはり息が詰まることには変わりは無い。
ゆっくりと長い廊下を歩く。ガラス張りの窓は外の景色を映し出す。
池の鯉は優雅に泳ぎまわり、ししおどしはカポーン、といい音を鳴らす。



「お母さんはお嬢様だったのか……」



そう言うことになる。
なんの家業なのかは知らないが、この家を見れば金持ちだと言うことは分かる。
お母さんの妹にあたる、義母もお嬢様。
そして園田家も金持ち。……じゃあ、私も令嬢か。
そう思ったらおかしくて、ぷっと吹き出してしまった。
自分が令嬢だなんて、考えただけで面白い。
きっと雪兎に言ったら馬鹿笑いされて、梅沢に言ったら凄いね、と感動されて。
陸嵩に言ったら……、なんて言われるんだろう?
たった2日しか会ってないのに、もう皆に会いたくなるなんて。
重症だ。
ふ、と溜息を漏らして、外の景色から目を離す。


そして次の瞬間、瞳に映ったものを疑ってしまった。
私の目線のずっと奥、それは先ほど当主がいた部屋に向かって歩いている人間がいた。



「……まさか、なんで」



心臓が、どどどどどと急にスピードを増す。
目線はその人を一直線に見つめている。
彼がここにいるの理由も目的も分からない。
それに、どう言う繋がりがあるのかも分からない。それほどまでに関係の無い人間がどうして此処に?


川上蒼明がどうして――――?


私の目線には今まさに、当主の部屋に入っていく川上の姿が映っていたのだ。
信じられないと、自分の目を少々疑って目を擦ってみたのだが情景は変わらない。
川上は当主の部屋の襖を開け、消えて行った。
興味本位、と言ったらいいのだろうか。
自分の意思では見なかったことにしよう、と思っていたのに、体は当主の部屋へと向かっている。
どうして彼が此処に?
それがどうしても気になって仕方が無かった。
しかも、当主の部屋に。



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