学園マーメイド
耳には畳をすって歩いてくる足音が聞こえてくる。
……ああ、見つかる。
襖が開く音がした瞬間、川上がはっと息を呑んだ音が耳に入った。
「ど、どうして……」
川上の驚きの声。
私は自分の心音を感じながら床の節を見つめていた。
「どうして……、ここにい」
「本当ですか?」
川上の言葉を遮る。
自分でも低く、冷たい声だと思った。
「川上さんが、あたしの本当の父親なんですか?」
「……っ」
川上の顔は見ない。……いや、見れない。
もし見てしまったら体の細胞が悲鳴をあげて、瞳から何かが流れ落ちるに決まっているから。
そんな格好悪い姿、見せられない。
川上は息を呑んで、そして吐いた。
「……本当だよ」
上から声が降る。
しっかりとした口調に、少し苛立ちを覚える。
何かいってやろうかと、口を半分あけたけど、そこから出てきたのは息だけだった。
言葉が……、出ない。
いつまでも黙っている私に痺れをきらしたのか、川上が私と同じ目線まで膝を折った。
心臓が熱い。脳みそが熱い。
それなのに気持ちは冷めていく。
「蒼乃」
川上は私の顔を覗き込むようにして見る。