学園マーメイド
「黙っていたことは本当に悪かった。……償えることなら何でもするよ。だから、俺と……家族になろう」
頭が真っ白だ。
考えることをしようとすれば、解読できない感情が次から次へと飛び出して、真っ黒にしてしまう。
私、誰?
憧れで、大嫌いで、敬愛していて、講師で、信頼できた大人で。
彼、父親?
ああ、もうダメだ。考えたって答えなんて出ない。
考えれば考えるほど、答えは真っ黒い渦の中に沈んでいく。
こんな時、いつだって出てくるのはあの人。
あの人……、陸嵩に会いたい。
「……なんでもしてくれるんですか?」
覇気のない声が出る。
抑揚のない小さな声。
川上は私の手を更に強く握った。
「ああ、なんでも」
私とは逆にしっかりとした声。
ああ、そんな事さえどうでもいい。
「……連れて行って欲しいところがあるんです」
何も言わなくてもいい、ただ傍にいてほしいと願う。
陸嵩、君に会いたい。
会って笑って欲しい。
あの屈託のない笑顔で、解決できない出口のない迷路から私を連れ出して欲しい。
笑って。