学園マーメイド
心の奥底に陸嵩の笑顔がしみ込んで、じんっと涙腺を刺激する。
鼻の奥がつんとなったが、涙を堪えることになんとか成功したようだ。
「……うん」
「あ、でも、一言メールくれれば良かったのに」
「陸嵩の家の前についてそれ思った」
「遅いよ」
「そうだね」
二人で笑う。
まだ名前もない関係だったころもこうして笑い合い、他愛のない時間を過ごすのがが好きだった。
そして今でも続けられることに、やっぱり喜びを感じている。
安心する、ほっとする……、自分自身でいられる場所。
水泳以外の生きる理由なのだ、この人は。
「……ねえ、蒼乃」
陸嵩が距離を少し縮めながら呟く。
「どうした?」
真剣な表情とやわらかい口調。
ああ、やっぱり(気づいてくれた)。
些細なこと口に出さないことを彼はいつも気づいてくれる。
陸嵩の顔を見たいのと同時に、助けて欲しかったのだ。
救いの手を差し伸べて欲しかったのだ。
どうして気づくのだろう?
どうして苦しいときに手を差し伸べてくれるんだろう?
それはきっと、私が陸嵩をどこかで必要としていたからだ。
私は近くによった陸嵩の手を無意識に握り締めた。
「……ごめん、どうしたらいいか分からないんだ」
その手を陸嵩が握ってくれる。