学園マーメイド
「うん、いいよ。ゆっくりでいいし、言いたくないことだったら省いてもいい。……何かあった?」
発せられる言葉は魔法だ。
兄に似て兄ではない存在。
兄が私にとっての光で、そしてそれに似ているから陸嵩を好きになったのではなく、彼の本質自体が好きなんだ。
優しいのに強い、彼の心が好きだ。
私は鼻から大きく息を吸ってから、ぽつり、ぽつり、と言葉を紡いでいった。
その間、陸嵩は相槌を打ちながら、頷きながら聞いてくれた。
手は離すことなく繋がれたまま。
ぬくもりに安心しつつ、全てを話し終えると暫くの間沈黙が続いた。
「…………」
「…………」
突然の事だ、自分の出世のこと、家のこと、父親のこと。
そんな全部言われて混乱しない人間なんていない。
顔色を覗おうと陸嵩を見ると、彼は眉を寄せていた。
……困らせてしまったね。
「ごめん」
そう言うと強く手をぎゅうっと握られた。
少し痛い。
「……俺の家も複雑だと思ってたけど、蒼乃のほうがもっと複雑だったんだね」
「…………」
陸嵩は手を繋いでいない方の手で自分の髪の毛をぐしゃりと掴んだ。
「俺こそ、ごめん。せっかく相談してくれたのに、言葉出てこない」
申し訳なさそうに眉を下げ、瞳を伏せる。
此方こそ申し訳ない気持ちになっている。
こんな顔をさせたくはない。