学園マーメイド
「……お前はどこで寝んの?」
「え?もちろん自分の部屋だけど」
「そんで蒼乃ちゃんもお前の部屋で寝んの?」
栄志の片言の質問に答える陸嵩の顔は至って普通だ。
自信たっぷりに頷く。
「そだよ。……つか、なにその顔」
「……怖い、俺陸兄が怖いよ」
自分の肩を抱くようにして震える啓志。
栄志は呆れたように頭を抱えて溜息をついた。
いくらなんでもそれはまずい、と言わんばかりに。
「蒼乃ちゃんの身にもなれよ。お前と一緒に寝たいと思うか?」
「え、だって寮で一緒に寝てるし」
「は?」
栄志と啓志の声が重なり、上手い具合にハーモニーを作った。
「あ、ちゃんと同意のもとだからね。……あとね、兄ちゃんたちが思っているような不誠実なことはしないから!ったく、俺と蒼乃をなんだと思ってるの」
フォローを入れたはずの陸嵩だったが、興奮した二人にコタツの中で足を蹴られ小さく悲鳴をあげた。
その後は栄志が陸嵩の頭を叩いたり(生意気だと叫びながら)、啓志が陸嵩の喉元に掴みかかったりと(栄志に便乗しただけ)、取っ組み合いになってしまった。
一体なにが気に入らないのか、と思った陸嵩だったが久しぶりの兄弟の絡みを少し嬉しく思ったりもした。
だが、蒼乃が風呂からあがってくるまでそれが続き、さすがの陸嵩もぐったりと生気を失ってしまった。
その話を聞いた蒼乃は“生意気だ”と罵る前に男女別の寮で一緒に寝ていることを突っ込め、とひそかに思ったのだった。
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