学園マーメイド
両親の事とか、家族の事とか、もちろん小さな問題ではない。
川上に対しては“家族になろう”と言ってくれた以上、目をそらさずに向き合わなければいけない。
だけど、ここに彼に出会った私がいて、私に出会った彼がいる。
そう、それでいい。
「……そうだね。あたしも陸嵩がここにいて良かったと思う。陸嵩に会えてよかったって思う」
握られた手に愛を込めて握りかえす。
「ふ、はは」
なんでこんなに簡単に壊してしまうのだろう。
どうしようもない行き場のない気持ちと、隔ててしまう扉をいとも簡単にばらばらにしてしまう。
凄いよ、陸嵩。
解放感につられて笑い声が零れると、陸嵩は不思議に思ったのか上半身を起こし、上から私の顔を覗いた。
「蒼乃?」
「あー、はは。ごめん。……好きだなあーって」
「――――っ!」
単純に思った言葉に陸嵩ははっと息を飲んだ。
月明かりで映った彼の顔はほんのりと赤い。
人からもらう思いは、重くて痛くて、暖かくて心地いい。
きっと川上が私に与えてくれる思いも同じなんだ。
重くて、重くて、痛くて、すぐに受け止められないほどなのだろうけど。
でも本気だからそうなんだろう(きっと暖かいんだろう)。