学園マーメイド
私が私の生きるために、誰かのためじゃない。
私自身のために。
「うん、そうだね。……あたしが、……決めるよ」
びっくりするほど、渦の中に沈んでいた答えが魔法の言葉で導き出させる。
あんなに悩んでいたのがウソみたいに、心の奥底に溜まっていた雲がふっと消えていく。
簡単なことだったんだ。――――そう、こんなにも。
私は決意を新たに電話を切ると、夕暮れに染まった空を眺めて息を吸う。
冷たい空気が胃に入り込む。
それを一気に吐き出すと、急いで階段を上がり玄関を開けた。
大きな音をたてた所為か、玄関で靴を脱ぐひまもなく中から義母が出てきた。
「あ、……おかえりなさい。お友達の家にお泊まりなさったみたいね、ど、どうだった?」
いつものような他人行儀な言葉もどうでもいい。
私はその問いに答えを無視して口を開く。
「あの、川上……、川上蒼明はどこにいますか?」
「……っあ、……そ、蒼明さんは……」
口ごもる義母の瞳を見つめるが、彼女は一切こちらを見ない。
「教えてください。今すぐ会って伝えたいことがあるんです」
余裕はなかった。
今ここに湧き上がってきた感情が新しいうちに、会って伝えたい。
どうしたらいいのかじゃなくて、どうしたいのか。
私の正直な気持ちをあの人に言いたい。
あまりにも真剣だったのか、義母はしどろもどろではあったがゆっくりと話し始めた。
どうやら川上は私の母、藤乃のお墓にいるらしい。
そこまで行く、と言ったら彼女は何も言わずに財布を取り出し、私の手にお金を握らせた。
どうやらタクシーで行けと言うことらしい。
いつもなら断っていたが、今は焦りもあって、小さく頭を下げて家を出た。
タクシーを呼んで、乗り込む。
暫く走り、タクシーが止まる。