学園マーメイド
残り50Mと言った所だった。
周りの大歓声の中、私は全身の血を煮えたぎらせた。
興奮した闘牛のように息を吐き、頭の中を無心にさせた。
浮かぶのは水面。
私は今、水の中を泳いでるのだ。こんな硬い地面なんかではない。
柔軟性のある水の中にいる。
さあ、泳げ。この広いグラウンドと言う名の水の中を泳ぎまわれ。
とにかく必死だった。
きっと今の私には無我夢中、そう言う言葉がぴったり合うだろう。
「……マジかよ、嘘だろ」
「有り得ねえ!」
観衆の声さも耳には届かない。
いつの間にか目の前にはバンビの背中はなく、その代わりに隣にバンビの肩が見えた。
追いついた、と言う感覚はなくただこいつよりも先にゴールに向かわなければと、その一心で腿をあげ、腕を振った。
あと少し、30、20、10………。
ゴールを示す白いラインが見えて、最後の力を振り絞ってそこを踏もうとした時、足が絡まりバランスを崩した。
それでも踏ん張り、白いラインを踏んだと同時に体を地面に打ちつけた。
ズザザア、体が砂で滑り数メートル先へと飛ばされる。
シーン、となるグラウンド。
判定を待つその静けさに観衆は全身を震わせていた。