学園マーメイド
たくさん話をしよう。
お互いが知らないことがないように(多少はあるけどね)。
陸嵩の話もしたい。
ああ、雪兎や梅沢。それから兄の話もしよう。
どんな顔をして聞いてくれるんだろう。なんて言ってくれるんだろう。
また頭を撫でてくれるだろうか。
水泳でいいタイムを出したら喜んでくれるだろうか。
笑ってくれるだろうか。
……私のような娘を持って良かったと思ってくれるだろうか。
ねえ、お父さん。
「蒼乃、もう一回聞かせてくれるか?」
真剣な声と同時に暖かく大きな身体が離れていく。
鼻をすすり、涙を拭いて川上の瞳を見上げる。
「俺と、家族になってくれないか」
――――『……ゆっくりで、いいから』
陸嵩の声が聞こえる。
そうだ、ゆっくりでいい。
ゆっくり家族になっていけばいい。今までの時間を埋めていけばいい。
「はい」
笑顔で答えると川上も満面の笑みで返してくれた。
そして再びぎゅっと力強く抱きしめられる。
「あのね、蒼乃。一つ、提案があるんだ」
静かに告げられたその提案に、私は心が躍るのと同時にひんやりと体が冷えていくのを感じたのだった。