学園マーメイド


久しぶりの皆での昼食。
遅れてやってきた私に雪兎と梅沢は笑顔で迎えてくれた。



「よぉ、何食う?」
「ラ、ラビ先輩!その前に久しぶり、とか挨拶あるでしょう!」
「梅沢よ、お前と違って俺は冬休み蒼乃と電話してたからそんなに久しぶりじゃねえの」



そう、川上の事を伝えに電話をした。
兄と繋がりのあったこの人にはお世話にもなったし、伝えなくてはと思った。
電話越しで“良かったな”と言った細い声は微かに震えていた。
言い合っている二人を横目に陸嵩がいないことに気づく。



「陸嵩は?」
「ん?ああ、コーチに呼ばれたから先に食ってくれってさ」
「春の大会のことで呼ばれたんだと思うよ」



――――ズキン(ああまただ)。
私はゆっくりと椅子に座って、二人の目を見据えた。



「二人に聞いて欲しいことがあるんだ」



声のトーンが真剣だと察したのか、二人は一呼吸置いて此方を見た。
いつか言わなくちゃいけない。
陸嵩がいないなら、好都合だ。
二人には悪いけど陸嵩よりも告げるのに心構えはいらない。
鼻から吸って口から出す。



「あたし――――」



簡潔な言い回しだったと思う。
……全て言い終わると沈黙が場を守った。
いきなり言われればこういう反応になるのは当然だ。



「……もう決定事項か?」



俯いた雪兎から落ち着いた声が聞こえた。




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