学園マーメイド
「うん」
「何年向こうにいる?」
「とりあえず1年。それからどうなるのかはまだ分からない」
「日本に帰ってこないかもしれない?」
「……分からない」
何も分からないんだ。
でも自分を試すには絶好の機会。
逃したくはない。何を言われても1年は向こうで自分の力を試したい。
質問を続けた雪兎がはぁ、と息を吐いた。
沈黙が続く。
「ごめん、おまたせー」
そんな重たい空気を振り払うかのような声を出し、現れたのは陸嵩だった。
だがすぐにこの雰囲気に気づいたのだろう。
表情を固まらせ、頭にハテナマークを浮かべながら、とりあえずといった感じで椅子に座った。
「ど、どうした?」
雪兎、梅沢と顔を見て、最後に私の瞳を見つめた。
――――ズキズキズキズキ、ズキン。
しっかりしろ、蒼乃。
傷つくのは自分自身じゃない、陸嵩だ。
一度瞳を閉じて、開く。
澄んだ色の陸嵩の瞳を見据える。
「陸嵩、あたしアメリカ留学する」
開かれた瞳。
映る戸惑いの表情。
見たくなかった悲しみの顔。
謝るのは違う、笑顔も違う。
私はただ無表情で彼の顔を見つめることしか出来なかった。