学園マーメイド
「しょ、勝者…、陸嵩!」
どどどどど、心臓の音が激しく響く。
その言葉を聞いたと同時に、胸の奥が苦しくなってどうしようもない絶望感に襲われた。
追放、その言葉が頭にこびり付いて離れない、なんとも言えない気持ちにさせる。
グラウンドに体をくの字にしたまま、強く砂を握り締めた。
負けた、負けたんだ。
「陸嵩!なんだよ、ヒヤヒヤさせやがって」
「絶対お前が勝つと信じてたけどな」
耳に入り込む雑音が更に不安を掻き立てる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
あの場所から追い出されるなんて嫌だ。
納得のいかない自分自身に砂を持った手を地面に打ちつける。
死を意味した勝負の結果に、言葉さえも出ず、体さえも起こせずにいた。
バンビの目が、とても嬉しそうに三日月になっているのも見えて、心臓が押しつぶされそうになった。
「―――や、俺の負けだ」
荒い息を立てながら発した彼の言葉に、空気が一変する。
「はあ?何言ってんの?」
冗談だろ、と言う苦笑いを含めた陸上部部員がバンビを見る。
私自身は今何が起こっているのか理解することが出来ずに、バンビと同じく荒くなった息をただ吐いて吸って、を繰り返しているだけだった。
「あー、負けた!ちきしょう!」
周りを無視し、バンビは叫ぶと未だに転んでいる私の方へと近づいてきた。
「ごめんな、お前の事見くびってた」
「…は、…っはあ…は」
自分が思っていたよりも力を発揮した所為で、息はなかなか整わない。