学園マーメイド
正直、人と関係がなくなるのなんて3日も経てば寂しさもなくなるだろうと思ってた。
だけどどうだ。
今は陸嵩の事が気がかりで尾を引いている。
だぶん、泳ぎにも出ていると思う。
「昨日、沙織さんに電話したよ」
「……なんて?」
「よろしくお願いしますってさ」
その人がオッケーを出したなら、彼女の夫もオッケーを出している。
彼女は夫の了解なしに動かない人だから。
私は水中で鼓動を打つ心臓を押えた。
少し、安心した。反対されたら面倒になるのが目に見えているし。
腹いせでアメリカ行きを反対されたら、元も子もない。
「行く前にはちゃんと挨拶してくからな」
「…………うん」
「ああ、尾神にもちゃんと挨拶に行こうな。藤乃にもちゃんと言っていかないと」
「……うん」
川上の声は耳にちゃんと届いているはずなのに、どこかに抜けていっているように感じた。
承諾が出た今、やはり胸の奥に突っかかるのは彼のことだけなのだ。
彼氏として、というのもあるが、友達としても失いたくない。
出来れば日本とアメリカで頑張ろう、って都合のいい事を言ってもらいたい。
それが酷いことだと分かっていても。
陸嵩の言葉は魔法なんだ。
それだけで、私は立ち上がることが出来る。
頑張ることが出来る。
彼の存在は私の中の大半を占める。
大きい、唯一の存在なのだ。