学園マーメイド
結局、時はあっという間に流れた。
陸嵩との接触は皆無に近いまま、創立際を迎えてしまった。
体育科、勉学科、文化科。
総集結したこのお祭りは、今まで経験した学校の行事で一番大きい。
屋台はいたるところにあるわ、噂を聞きつけた一般人がたくさんいるわ。
見ているだけで目が回りそうだ。
「園田さん!」
人ごみを掻き分けて梅沢が大きく手を振っている。
「梅沢くん」
「す、すごい人だね。こんなに来るなんて思ってなかったよ」
「ホントだね。何が楽しいんだろう」
ぽつり、と呟いた言葉に梅沢は苦笑いをした。
そして思い出したようにハッとした顔をする。
「あ、ああ。そうだった!僕、創立際の実行委員なんだ」
そう言って腕に貼り付けた実行と言う文字を見せる。
「それで、受付に園田さんに会いたいって言う人が来てるんだけど、一緒に来てもらえる?」
私に会いたい人?
それにとても驚いた。
梅沢に聞くあたり、この学園の生徒ではないことは確かだし。
と言う事は、一般人だ。
誰だかは検討がつかないが、探していると言う事はいかなくてはいけない(梅沢の苦労のためでもあるし)。
私は無言で頷いて、また人ごみを掻き分けて行く梅沢の後ろを着いていった。
通り過ぎる屋台や催し物を見てると、何故だか陸嵩の顔が浮かんでくる。
彼が好きそうなものばかりあるからかもしれない。
そういえば一緒に回ろうって言う約束はなくなってしまったのだろうか。
……もう、このままなのだろうか。
ちょっと考えただけなのにぶわり、と体中にその不安が広がりじんわりと目頭を熱くさせた。