学園マーメイド


弱ってるなぁ……、そんな事を考えながら歩いていると到着したらしい。
梅沢が指を指す。



「あ、あの人たちなんだけど……、し、知り合い?」



指を指す方向を追っていくと、その先に見たことのある人が。



「あ、ああ!栄兄、蒼乃ちゃんだよ」
「お!久しぶりだな」



……穂波兄弟だ。
相変わらずのテンションにふっと笑いが漏れる。
梅沢は知り合いだと安心したのか、案内を終えると持ち場に帰っていった。

立ち話はあれだから、と私はカフェテラスへと促した。
人で満ち溢れていたが、それでも座れる席を確保できた。



「なんか飲む?」



私の問いに二人は首を振った。



「さっき一通り回ってきたんだ。栄兄がどうしてもバナナチョコが食いたいって言ってさ」
「馬鹿、お前も超ノリノリだっただろうが」
「ふっ、兄想いの弟の演技だよ。え、ん、ぎ!」



相変わらずだ。
日数にして彼らと一緒にいたのは1日だったけど、それでも馴染めてしまっているのは陸嵩の兄弟だからなんだろう。
二人のやり取りに笑みが零れる。



「つーかさ、陸の野郎最近どう?」



どき、と心臓が揺れた。
話し方からして私がアメリカに行くのを彼らは知っていないんだろう。
どくどくとなり始めた心音を聞きながら、口を開く。





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