学園マーメイド


そう、彼は初めから私の“特別”だった。

陸嵩は、特別だった。
それはもうずっとずっと、変わることのない事実。

……失いたくないもの。



「本気で反発なんてした事ないんじゃない?陸兄はさ、自分で溜め込んで人にぶつけるなんてしたことないし」
「だな。喧嘩しても謝るのは陸の方だし、人を避けるなんて滅多しないからなぁ」



人を避けることは滅多にしない?
ならこの状況はなんだ。自問自答しても事は変わらない。
思い出話に花を咲かせている二人の言葉は耳の穴を素通りしていく。
私は陸嵩に酷い事を言った、そしてその結果彼に避けられているんだ。
だけど、彼は滅多に人を避けない人。

……私は陸嵩に嫌われたのだろうか。

だから避けられてしまうのだろうか。

――――いいや、違う。

今まで一緒にいてそれは良く分かってきていることだ。
陸嵩はそんな事をする人じゃない。
これは彼なりの反発だ。
私に向けられた彼の反発なんだ(抵抗とも言うかもしれない)。

……ああ、そうだ。

陸嵩と向き合った気でいたけど、逃げてたんだ。
また、逃げてたんだ。
私はまだ正面切って陸嵩と向き合えていない。





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