学園マーメイド
軽く息を吐いて、壁から背中を剥がす。
少し戸惑い気味の梅沢に“陸嵩探すのと一緒に雪ちゃんも探すよ”、と言うと彼は少し照れくさそうに笑った。
大変だろうと思っていた雪兎探しは案外楽に見つかった。
頭にウサギ耳を付けた雪兎が(どうやらクラスの宣伝のようだ)看板を持って女の子と写真を取っている。
それを少し覚めた目で見つめていた私と梅沢に気づくと、苦笑いを見せて此方に近付いてきた。
「可愛いだろ?……そんな目で見るなって」
ぐしゃぐしゃと私の髪の毛を撫でる。
まあ、似合ってなくもない。
よし、後で私も写真をとってもらおう。
「二人してどうした?」
沈黙に耐え切れなくなったのか、雪兎が尋ねる。
隣の梅沢を見ると雪兎のウサギ耳に目が釘付けになっているようだ。
用件があるのは梅沢の筈なのだが、聞いてみることに損はない。
「あー、あのさ陸嵩知らない?」
「バンビ?」
先ほどの梅沢と同じ反応を見せられ、ちょっと複雑な気持ちだ。
今まで陸嵩との接触がない分、当然の反応といえばそうなのかもしれないが。
「悪いな、知らない」
雪兎が小さく首を振る。
私は頷いて、お礼を言うと再び探すから、と言って二人に背を向けた。
腕時計を見ると4時を過ぎている。
確か6時から後夜祭が始まるらしい。急がないとますます探しづらくなる。
早足でその場を立ち去ろうとする私の背中に雪兎の声が刺さった。
「蒼乃!」
少し距離のある場所で、雪兎が声をあげる。