学園マーメイド
「裕利もきっと今回のアメリカ行き、絶対行けって言うと思うよ」
暖かい瞳が此方を見ていた。
「まあ、色々思うこともあると思うけど、お前はお前の道を進んで行けよ。ずっとずっと、応援してるから。心配しないで行って来い!」
ああ、なんて言ったらいいだろうか。
苦しいような切ないような、でも嬉しいような。
体の中心にぽっと火を灯されたような、不思議な暖かさ。
「ぼ、僕も!やっぱり園田さんがいなくなるのは、さ、寂しいけど。でも、世界で活躍する園田さんを見たいって思うんだ。だ、だから、が、頑張って!」
「…………うん」
「いつでも園田さん……、あ、蒼乃さんの見方だから!」
今にも泣き出しそうな顔をして声をあげた梅沢の声は、耳から体全部に浸透していった。
こんな時言葉の引き出しが多い人ならなんて声を出すのだろう。
生憎そんな引き出しを多く持ち合わせてない私は、ただただ頷くことしか出来なかった。
「ありがとう!」
うん、これしか言えない。
私にはこれが精一杯。
脆くなった涙腺から何か出てしまうのを必死で堪えながら笑顔を作る。
ありがとう、貴方たちと出会えて、一緒に過ごせて楽しかった。
その思い出があれば、私は向こうでも何度でも何度でも貴方たちを思い出す。
そして懐かしく思い、会いたいと願い。
再会を果たしたときは、笑顔で満ち溢れるだろう。
私は二人に大きく手を振って背中を向けた。
最後じゃない、最後じゃないのに。
最後みたいな言葉に、アメリカ行きを再び実感するなんて。
……ああでも、本当に、出会えてよかった。
再び走り出した私は希望に溢れていた。
まだ多少不安はあるにせよ、二人の励ましの言葉に感動せざるを得なかった。
だが、二人と別れて1時間。走っていた足に限界がきているようだ。
休憩を取るために空き教室に入り、息を整えてみる。
未だに陸嵩を見つけられずにいる。
無駄に走り回ってもダメだ。
広いのだ、見つかりっこない。