学園マーメイド
Breath...04
Breath...04
ようやく平穏な日々が戻ってくるのだと思った、2日後。
いつも通り授業を受けて、いつも通り部活を終えて、いつも通りに夕飯を済ませ…、とここまでは良かった。
時刻は午後8時13分47秒。
この後9時には合宿に行っていた光が返ってくるし、お茶の準備でもしようかと思っていた矢先。
飛び込んできたノックの音に、それはもう驚いて(部屋をノックするなんて光意外ありえないしその光もいない、だから)暫く応えられなかった。
だが、あの俺なんだけど、と言った声を聞いて、硬直していた体がほぐれていった。
この声はバンビだ。午後9時30分までなら自由に男子寮と女子寮を行き来できる。
バンビがここに来てもおかしくはない、が何故ここに来たのかが問題だ。
「………」
はい、と小さく返事をしてドアノブを回すと案の定バンビが姿を現した。
だがその顔には小さな困惑が入り混じっていて、今まで見たことのないバンビだ。
「あー、あの?どしたの?」
俯きがちな顔を覗くようにして見ると急に顔をあげ、そして頭を下げた。
私はと言うと、目が点。
「ごめん!」
「…は…?」
行き成りすぎる謝罪に、対処が分からず下げたバンビの頭を見つめるだけ。
すると、バンビはゆっくりと頭を上げ遠慮がちに私の瞳を覗いた。
「俺、その…、マーメイドの事考えてなくてさ。酷いことゆってごめん!」
きっと勝負する前の話をしているのだろう。
談話室で話したあの内容、酷いことと言ったらそうなるのかもしられない。
だけどまさにご名答。バンビの言っている事は何も間違ってはない。
今にも泣き出しそうな顔をするバンビに小さく笑ってみせる。
「いいよ、気にしてないし。貴方が言ったことは事実だから」
「違う!!あ…、違う、よ」
頭にハテナマークを浮かべる私に、バンビはポツリ、ポツリと話し始めた。
「聞いたんだ、俺。マーメイドが皆を部活に戻すために必死だったって。部員一人一人に頭下げて謝って、顧問やコーチにも説得したりしたって…。それなのに、何も知らないのに、俺あんな酷いこと言って…本当ごめん」
確かに、皆が部活に復帰してくれるなら出来る限りの事をしようと思った。