学園マーメイド

肩まである茶色の髪(産まれ付きらしい)を耳にかけながら、椅子に腰をかける。
一重なのに目は大きくぱっちりとしていて、鼻筋も通って綺麗な顔立ちはいつもキラキラと光ってまぶしい。
まるでその名前の通り。



「んあ、ごめん」
「ごめんじゃないよ。ちゃんと誘ってよね」



私はくせ毛ではねた首元ぐらいある黒髪に指を絡ませながら頷いた。
本当かなあ、と愛らしく笑う彼女を見てつくづく自分とは正反対だなと痛感する。
ストレートな髪に対して、くせ毛でボリュームのある髪。
一重で目が大きくキラキラしているのに対して、二重で多少、目は大きいが陰険なイメージを持つ。
まあ、スポーツなんて可愛いも何もない。
勝利と言う栄光に向かってただ突っ走るだけ。
なりふり構っていられるもんか。



「あたしさ、来週から2泊3日の合宿なんだ」
「ああ、バスケ部は大会近いもんね」
「そうなの、でも聞いてよ。その合宿先が…、すっごい山奥なんだって!」



はあ、と大きく溜息を吐いた光を横目にミルクココアを腹に流す。



「合宿なら普通じゃない?」
「もう!蒼乃はロマンってもんを分かっちゃいない」



ロマンを合宿に求めるのを理解する方が大変だよ。
苦笑いを浮かべながら話に耳を傾ける。



「いい?男子バスケ部との合同合宿!ああ、憧れの先輩とホテルのラウンジでお話とか、風呂上りに“いいシャンプーの匂い”とか。そんなの何にもないんだよ!」
「いや、あのね。山奥でもそう言うことは普通にできるでしょ」
「違うの。雰囲気が大事なのよ。誰が山奥の虫がいっぱいいる所で先輩とお喋りしたいって思うのよ」



ほお、合宿の真の目的が明らかになったな。



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