学園マーメイド
謝罪をするなんて事は当たり前だったし、謝罪が苦痛だなんてそんな小さなプライドは持ち合わせていない。
だから何度も頭を下げた、部活に戻ってください、って何度も言った。
でも私が水泳部にいる限り、彼らは戻らないと冷たい瞳が物語っていた。
それが当たり前なのだと、心のどこかでは分かっていたのにいざ彼らのその視線を見たら、体が凍りついたように動けなかった。
未だに潤んだ瞳のバンビを見つめ、微笑んだ。
「…ありがとう」
小さく零した言葉にバンビは不思議そうに首をかしげた。
「え、なんで?」
「わざわざそんな事を気にしてくれて」
今まで会った中でそんな人は一人もいなかった。
内側に支配されている誰も見ようともしない部分に、直球で触れてきたのはこの人が初めてだ。
気付いていても気付かないふりをする人間なんてたくさん見てきた。
そう、たくさん。
だけど彼みたいな人間は初めて。
「…気にするよ。本当ごめん、…、本当」
何度も謝るバンビにブイサインを作って笑って見せた。
「大丈夫!慣れっこだから」
安心させようとして掛けた言葉だったが、逆に悲しい顔をさせてしまったようだ。
眉が段々下がっていくのが目に見えて分かる。
今度は声のトーンを低くしていってみる。
「本当に大丈夫だから。君が言ったことに間違いはなかったし、私もそれを理解してる。…うん、それにそんなことじゃ折れないくらい水泳を愛してるから」
笑顔を作って言うはずが熱が入り、笑顔を作れずにいたようだ。
バンビはその表情を見て目を丸くしたが、すぐ小さな笑みを落とす。