学園マーメイド

自分で出した言葉に自分で納得した。
そうだ、こんな事は自分にとって苦にはならない。
あの場所を奪われたら生きるための理由をなくす。
生きるための理由を奪われたらここに存在する意味がなくなる。
こう思うと、“愛している”と言うよりは“執着”と言う言葉がぴったり合うだろう。


少し沈黙が続いて、ちらりと時計を見ると8時35分14秒を差している。
まだ光が返ってくるのには時間があるし、お茶でも出そうかと考える。
買い置きしてあるペットボトルを取ろうと手を伸ばすと、バンビがその手を大きく骨ばった手で掴んだ。


「…どした?」
「……あのさ」


バンビは俯いて瞳を左右させると急にバッと顔をあげた。



「俺、あんたが好きだ!」



…時計の刻む音がコチコチと耳に響いた。


「え…、と」


その言葉の意味を理解できないほど能無しではない。
この人、今私を“好きだ”と言った。
聞き間違いではないはずだ、あの距離で聞き間違えていたら相当耳の悪い人間だと言う事になる。


「もちろん、恋愛感情としての好きだからね」


握られている腕にバンビの圧力が強くなる。
私だって友達としての“好き”だとは思ってなかった。
昨日、今日でやっと彼の招待が分かったのに友情も何もない。


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