学園マーメイド
もちろん。
「…バ……、陸嵩」
「ぶっ、何その片言な呼び方」
周りには友達がいたのに関わらず、そんなのも気にしない陸嵩がこちらへ向かってくる。
正直、男友達なんていなかった自分にとってこういう時どう接していいのか全く分からないのだ。
そりゃ、片言にもなる。
「おはよ、蒼乃」
改めて言われて照れる。
「おはよう」
「あのさ…、昨日…その…」
罰悪そうな顔の陸嵩がチラチラとこちらを覗う。
「メール、送ってくれなかったよね?」
「あ」
「もしかして…、忘れてた?」
その通りだ。
すっかり忘れていた。
陸嵩の言葉にポンッと脳裏に浮かんできた携帯。
そう言えば昨日のよるメールを送って欲しいと頼まれた気がする。
私の思いついたような顔に、何故か陸嵩はほっとして顔を緩めた。
「なんだよ、もう!」
ケラケラと笑う姿に軽く謝る。
「俺の事嫌いだからメール送ってくれなかったのかと思ったじゃん」
「…君を嫌いになる要素はなにもないと思うよ」
私も顔を緩めると陸嵩は少し驚いて、歩こうか、と言ってきた。
どうやら陸嵩の友達は先に行ったようだ。少し先に集団が見える。
私達は歩き始める。
日差しが眩しくも容赦なく照る。
「そっちこそ、どうして嫌いになったかもなんて思ったの?」
「だって俺色々と蒼乃に酷いこと言ったし、やったし…。もしかしたら、って思った」
まだそんな事を気にしていたのか。
男にしてはねちっこい奴だ。
昨日も言ったようにあの出来事は確かに危機的状況だった、だけどそんな事では絶対自分の気持ちは変わらない。
水泳は私の全てであり、私は魚である。
必然的に結ばれる私と水泳の絆はきってもきれはしない。
人間関係のように脆くはない。