学園マーメイド
Breath...06
Breath...06
音を掻き消し、無の世界へと誘ってくれる場所。
ただそこに身を委ね攫われるまま、ゆっくりと。
癒される、安心する、なんてちっぽけな感情なんかではなく、そこにいなければならない、そう思う。
誰が何を言おうと、此処だけが私の生きる場所。
「…は、…はぁ」
ザバリ、と大きな音を立てて水面から顔を出して息を吸う。
朝日が水面を反射してキラキラと光る。
泳いでいた体が熱を持ち、それさえも心地良いと感じる。
キャップとゴーグルを外し、水の中に沈んでいくと聞こえる心音と水音。
水の中にいるのに暖かくこのまま溶けてなくなってしまいたいと刹那に願う。
だがそれも叶わない。
息を吸うために私は地上へ戻らなくてはならない。
再び水面に顔を出す。
「…はー、…はぁ」
いつも聞こえ出す雑音が不快でたまらない。
ぐっ、と眉を寄せるとプールサイドから此方に向かってくる姿が目に入る。
それはもちろん誰だかは想像がつく。
「まーた朝練?最近よくやるよね」
ふさふさの茶色の髪とまんまるい目。
半そでのワイシャツに制服のネクタイとズボン。
陸嵩が通学鞄を片手に呆れた顔をして笑う。