学園マーメイド
『…ヒイキだよ』
『はあ、お前が来てから部活狂ったよな』
頭に響く声に、瞳が潤む。
部員がいないのにはちゃんとした理由がある。
つい最近、2週間前くらいだった。
自慢ではないが中学時代は大会に出れば優勝は確実だったし、何の泳ぎに対しても自信があった。
水泳部のコーチ曰く、特待生の中の特待生が私らしい。
顧問もコーチも希望の眼差しで迎えてくれた。
嬉しかったよ、そりゃ自分の得意としている事を誇りに思える事だし。
だけど、入部して1ヶ月。
私にだけ課せられた特別メニューが事の発端だった。
『…特別メニューですか?』
『ああ、園田(そのだ)には期待しているからな』
皆が違うコースで普通のメニューをこなしている中で、私一人特別なメニューをこなす。
誰だって思う、こんなの卑怯だって。
私だっていい気はしない。
『…ヒイキだよ』
『そうだよね、蒼乃ばっかり』
ごめん、とただ謝る事しかできなくて。
顧問の先生に特別メニュー撤回を申し出たけど、それも受理されず。
周りからはブーイングが殺到してた。
『はあ、お前来てから部活狂ったよな』
『私こんなに部活を楽しくないって思ったの初めて』
『 蒼 乃 、 や め て く れ な い ? 』
やめる…、それは水泳部からの追放。
唯一の息の出来る場所から出て行けと言う、冷たい言葉だった。