学園マーメイド


気付くと薄明かりのついた部屋にいた。
匂いで分かる、ここは自分の部屋だ。
だが意識がはっきりとしないようで、ぼやぼやとする頭でぼうっと低い天井を眺めていた。
暫くして耳にカチカチと言う携帯のボタンを押す音が聞こえ出し、隣に陸嵩がいる事に気がつく。
顔を横にずらしてみるとベッドに三角座りして、難しい顔で携帯を弄る陸嵩がいた。
また性懲りもなくお忍びか(まあ慣れてしまっているが)、と呆れたように溜息を吐くと、それに気付いた陸嵩が此方を向く。


「ごめん、起こした?」


慌てて携帯をしまう。


「いや、自然と目が覚めた。…今何時?」
「12時ぐらい」
「……もちろん夜のだよね?」
「うん?そうだけど」


確かコーチの話を聞きに行ったのは1時ぐらいだったはずだ。
それからゴタゴタがあって3時には此処の寮にたどり着いていた、だとしたら……、9時間も眠っていたのか。
いくらなんでも寝すぎだ。
自分に呆れるように溜息をつくと、陸嵩が不思議そうに首をかしげた。


「どした?」


走馬灯のように今日の記憶が頭を独占する。
だけどさっきよりも嫌な気分にならない。
なんだろうか、この気持ちは。今までに感じたことのない気持ち。
いつもならば思い出しただけで気分が悪くなり、人の傍にいる事も、人の声を聞くことも嫌だと感じてしまうのに。
今日はどうだろうか、それどころか気持ち悪くならない。


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