学園マーメイド
単純なやつだなあ、とふっと鼻から笑う。
「そう、嫌なことがあったり、辛いことがあったり。そんな時にこうして傍にいてくれる人がいる。それだけで、こう……、上手く言えないんだけど……、あったかいんだね」
弱い部分を見せるわけじゃない。
そんな自分を認めて、責めずに傍にいてくれる。
弱い自分がいる事を知っていても、言葉にしなくても、包み込んでくれる空間を彼は持っている。
それがこんなにも暖かいものだったなんて知らなかったんだ。
誰かにいてもらいたいと、そう思う気持ちがこう言うことなんだ。
馬鹿みたいに驚いた顔をしている陸嵩を見て、ぷっ、と噴出してしまう。
また、いとも簡単に本当の気持ちが口から出てしまっていた自分自身にも。
(まだ驚いた顔のままだが)曇りのない陸嵩の瞳を再び見つめて口を開く。
「……だから、ありがとう」
そう告げた次の瞬間、ぐっと腕を引き寄せられ訳の分からないまま体に熱を感じた。
何が起こったのか暫く分からず硬直したまま。
どうやら陸嵩の胸の中に居て、陸嵩は私の体をぎゅっと抱きしめているらしい。
彼の肩に私の顎が乗っかり体は不自然に前につんのめった形だ。
腕はぶらん、として行き場をなくしている。
「……ごめん。俺がいいって言うまでこのままでいて?」
表情が見えないからどんな顔をしているのか検討もつかない。
だけど彼の抱きしめている腕と声が震えているのだけは分かった。
その事に何故か酷く心が苦しくなって、宙に浮いている腕が陸嵩の背中へとまわる。
背中に手がまわったことに驚いたのか、彼の腕の力が一瞬弱まったが次にはまた力強く抱きしめられる。
「ありがとう」
優しい声が上から降ってきた。