学園マーメイド
何故お礼を言われたのか疑問に思うのはあとにして。
初めて異性に抱きしめられて、ここは乙女らしく“きゃー”と叫ぶとか“頬を赤らめる”とかするべきなのだろうか。
こういう状況にどう接したらいいのか全く分からない。
ただ、人の体温がこんなにも心地良いのだと初めて知った。
今日のあった出来事も、過去も、その時は何も考えることが出来ない。
考えられないほど心地よかったんだ。
「こっちこそ、…ありがとう」
こんな気持ちに初めてなれたのも、君のおかげ。
誰かに傍にいて欲しいとか、寂しいとか心細いとか。
そんなの味わっても独りで乗り越えていけるんだと、確信していた。
実際に何度もそんな経験を繰り返したし、その度に自力でそれを乗り越えてきた。
平気といえば平気だった。
だけどほんの少し、誰かに寄りかかるだけで重荷が全ておろされたように体が軽くなる。
同じ時間の共有がこんなにも暖かいなんて、知らなかったんだ。