学園マーメイド



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誰もいなくなった体育館には、床にバスケットボールのつく激しい音が響いていた。
少年は何度もゴールにシュートを決めようとしては失敗し、苛立ちを覚え思いっきり床にボールを打ちつけた。
激しい音を出してボールは高く宙を舞い、何度かバウンドして床に転がる。


「……あー」


低くうめく声に似たものを発すると、その場にしゃがみこんで汗を手で拭った。
辺りは日が沈みかけてオレンジ色に染まっている。
暫く床に転がるボールをぼう、と眺めていた少年は深く溜息をついた。
そこへ陽気な足音が体育館に向かってくるのが聞こえた。


「ん、あれ?あー、ラビ先輩」


“ラビ”と呼ばれた少年、塚田雪兎が声の方へ顔を向ける。
その先には今の自分とは正反対な少年、陸嵩が笑顔で手を振っている。


「よぉ、バンビ」
「自主練っすか?」
「や、ちょっとな」


床に腰を下ろしたままへらっと笑う雪兎に陸嵩は首をかしげた。
いつもは陽気で明るい印象が強かった陸嵩は、初めて見る雪兎の切なげな表情に戸惑いを感じた。




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