学園マーメイド
目が覚めると、時計は7時を指していた。
なんて丁度いい夕飯の時間に目が覚めたんだろう。
自分の腹の具合に感謝すればいいのか、それとも食い意地が張っていると思うのか。
…どちらも半々だ。
とりあえず腹を満たすために寮の食堂へと向かった。
扉を開けるともう大多数の人が集まって、食事をしたり運んだりしている。
メニューを見ると今日はパスタ料理らしい(プラススープ付き)。
ミートソース、タラコ、カルボナーラ、と書かれている。
「……ミートソースかな」
決め難いが、今日はタラコやカルボナーラを食べる気分ではない。
定番メニューで腹を満たしてから色々考えよう。
決めてすぐ窓口に行って注文すると、そう待たないうちに出来上がった。
それをトレーに乗せ、スープを汲み、席へ座ろうと移動を始めた直後だった。
肩に強い衝撃が加えられ、バランスを崩した体はトレーを支えられなくなり手から離れていった。
トレーは当たり前のように支えをなくし、床へと落下を始める。
パスタは宙で分散し、幾筋にもなってまるでダンスを踊っているみたいだ。
スープは綺麗な放物線を描き、スープの粒が何球も飛び散った。
それがつま先にかかり熱い。
派手な音を立てて、二つの料理は見事に床に落下した。
「あ、ごめん。そこにいると思わなかった!まじごめんね!」
肩に衝撃を与えたのは名前や顔の知らない女の子だった。
両手を合わせて謝ってくる。
大丈夫だと伝えると、彼女は“だよねー、強いもんね”と少し皮肉めいた言葉を発し去っていった。
「……もったいない」
私は腰を折り、散乱したミートソースを手で集める。
ベトリ、とソースが手につくがそんなもの気にしていられない。
折角作ってくれた料理が台無しだ。