学園マーメイド
当たり前に一人で片づけを始めていると、回りでは非難に似たような声と馬鹿にするような笑い声が聞こえた。
だがそんなものも気にしない。
前にもこんな事があったし、これも同じようなことだ。
そう言い聞かせて手を動かしていると、優しくてそして何処かで待ち望んでいた声が聞こえた。
「蒼乃?」
顔を上げなくても分かる。
――――陸嵩だ。
「大丈夫か?どした、転んだ?」
「ん、まあそんなとこ」
「……嘘だろ。友達から聞いた」
「あー、そっか」
ふ、っと笑いを零すと彼はちょっと納得いかないように眉を寄せた。
そして散乱しているパスタやスープに入っていた具をかき集めるのを手伝ってくれる。
「手、汚れるよ」
「蒼乃だって汚れてるじゃん」
不機嫌な声が返ってくる。
「……後で舐めるよ」
「舐めないの!……もー、蒼乃のは冗談に聞こえないから怖い」
不機嫌だった顔がケラケラと笑い出す声で明るくなる。
まさか私も床を触った手を口に持ってくなんて事しない、だけど冗談に聞こえないと言われると複雑だ。
そんな風な人間に見えるのだろうか。
そう思ったら可笑しくて、陸嵩の笑顔につられて同じようにケラケラと声を出して笑ってしまった。
それから今まで朝食と夕飯は別々に食べていたのだが、夕飯を一緒に食べる宣言をされてしまい、夕飯を食べに行く前は連絡を寄こせと強く言い切られてしまった。
断れないでいる時点で、その行為があり難いと思っている証拠なのだろう。