学園マーメイド
雪兎と関われば、必死で硬く閉ざしてきた扉が開いてしまう。
そこから飛び出て、映し出されるあの鮮やかな映像に、私は耐えられない。
強く生きると決めた時から鍵をかけてきたんだ。誰にも立ち入らせはしない。
「なんだそりゃ。まあ、ラビ先輩は蒼乃の事知ってるみたいだったよ」
「……なんか言ってたの?」
「んや、マーメイド知ってるかって聞かれて、それで俺……」
と言い掛けて何を思い出したのか、急に顔を赤くして顔を枕に押し付けた。
突然すぎる行動に此方としてはどう対処していいのか分からないので、暫く放置。
するとゆっくりと顔を上げて、熱い、と連呼し始めた。
「エアコン下げようか?」
「や、いいです。いいです」
「頭のネジ取れたね、陸嵩」
冗談っぽく言ってみると、陸嵩は恥ずかしそうに頭を掻いて、誰かさんの所為でね、と言った。
どうやら誰かの所為で頭のネジが飛んだらしい。
所属する部活自体違うので今日一日何があったのかは分からない。
陸嵩の頭のネジをぶっ飛ばせるほど凄い人がいるのだろうか、そう思ったらその人物が誰なのか聞きたくなり、思い切って聞いてみた。
「……誰の所為?」
「…………」
反応がなく、陸嵩はまた枕に顔を埋めると左目だけこちらに向けた。
「蒼乃がそれを言うかなあ!……あー、恥ずかしい!」
「え、ごめん」
どうやら聞いてはいけなかったらしい。
慌てて謝ると、彼は照れくさそうに顔を上げて笑った。
「また蒼乃を困らせるかも知れないけど言ってもいい?」