学園マーメイド

人望が厚く、何より陸嵩自身が友達を大事に思っている。
正反対な私にもこうやって優しくしてくれる。
お人よし、と片付けてしまうのは簡単だが、それ以上の何かが皆を惹きつけているんだろう。
だからこそ気に食わないと思う人が出てきてもおかしくはない。
嫌われ者の自分と人気者の彼では立場が全く違う。
下駄箱の中に“優しくやれてるからってつけあがるなよ!”と乱雑な字で書かれた紙が置いてあったこともあり、嫌がらせがどう言う理由で行われていたのかよく分かった。
陸嵩が悪く言われていないのは良かったが、それにしても嫌がらせはもうやめて欲しい。


そんなこんなをベッドの中で考えているうちに目はすっかり覚めてしまい、深呼吸して背伸びをするとベッドから出た。


「しょうがない。ご飯食べて課題するか」


気合を入れるために言葉に出して言ったあと、タイミングよくお腹が鳴った。




朝ごはんを終え課題を軽く済まし昼ごはんを食べ、そして部活(と言っても自主練)へ向かう為寮を出た。
早足で学校へと入る。
あり難い事に学校は外に比べてひんやりとしている。
今日は無事だろうか、と恐る恐る靴箱を開ける。


「…………はぁ」


安堵の息が漏れた。
今日は何もない。これで部室にも何もないといいが。
不安を胸に靴を履くと、短パンに入れておいた携帯が振動し始めた。
身構えていただけにビクリ、と肩を震わせてしまう。
慌てて携帯を取り出すと光からのメールだった。
“おはよ、起きてる?バスケ部女子は志栄学園と試合するんだあ!応援よろしくぅ”と絵文字たっぷりの文章が送られてきていた。
たまに光からのこういう報告が実は楽しみだったりする。
こんな私に声をかけてくれた彼女は私にとって唯一の喜びだったのかもしれない。


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