学園マーメイド
Breath...08
Breath...08
---------------
エアコンの温度を設定し、タオルケットをかけると陸嵩は心配そうにベッドで寝ている蒼乃の髪を撫でた。
さっき汗を拭いたばかりなのにまたべっとりとした汗が額から噴き出ていた。
雪兎も傍らで彼女の容態を見て溜息をついた。
その溜息に反応した陸嵩が、蒼乃の額に濡れタオルを置くと口を開いた。
「先輩、話したいんで談話室来てもらえますか?」
雪兎はそれに黙って頷く。
蒼乃の部屋を出て、談話室に向かった。
談話室に入り向き合うようにソファーに座ると、どちらも口を開く事無く沈黙した。
陸嵩は視線を下にして俯き、雪兎は両手を握りその上に顎を乗せている。
そして暫くの沈黙の後、陸嵩が重い口を開いた。
「俺、蒼乃が好きです」
顔を上げ、雪兎の瞳を真っ直ぐ捕らえる。
真剣なその表情に嘘偽りがないことは確かだった。
「だからこそ、知りたいんです。……蒼乃と先輩の関係と、……蒼乃にああいう現象が起こること」
「…………」
好奇心で知りたいと思ってはいなかった。
ただ純粋に彼女の力になりたい、彼女を守ってやりたい、その気持ち一心だった。
青臭いただの高校生の戯言のように聞こえるかもしれない。
守ると言っても自分に何が出来るのかもわからない。
だけどそれでも、何かしてやれることがあるのなら、と。
雪兎は同じように陸嵩の瞳をじっと見つめ、静かに吐息を漏らした。
「あいつの過去を受け止めるだけの力があるか?」
「……正直分かりません。前にも一度あんな状況になった時、蒼乃に拒絶されたんです。“お願いだから出て行って、一人にして”って」
あの時の蒼乃の顔色と声色があまりにも切なくて、何より誰も頼ろうとしていなくて。
自分はここにいてはいけないんだと、そう思ったことがあった。
だがそれでも傍にいて、力になってやりたいと思い、無理矢理“添い寝”と言う形を取った。
それが今でも続いているのは彼女の優しさなんだろう。
陸嵩は再び俯いて眉を寄せると黙り込んだ。
同様に雪兎も口を噤むと、蒼乃が発した言葉を繰り返し頭で唱えていた。