学園マーメイド


ぼわんぼわんぼわん、そんな音が聞こえてきそうだ。
気持ち悪い感覚、体が浮いているようなそんなファンタジーの様な感覚。
体中が気持ち悪い。


「……気持ち悪い」


声に出しても気持ち悪さは変わらない。
私は今どこにいるんだろうか、まさか本当にファンタジーの世界に連れ込まれたわけじゃああるまい。
重たい瞼をゆっくりと開かせると、それまたぼんやりと滲んだ世界が飛び込んできた。
茶色だ、―――…天井の色だ。
二段ベッドの天井の色だと気付くのにそう時間はかからなかった。
そして次には声。


「蒼乃?……ああ、良かった!目覚めたんだぁ」


まだぼんやりとする耳でもそれが誰なのか分かった。


「りく、たか」
「うん、俺だよ。水飲む?汗かいてるだろうし、風呂行ってくるとか?」


そう言いながら彼は私の体を壊れ物のように優しく起こしてくれる。
机に置いてある水を掴むと、それをそのまま此方に持ってきて飲ましてくれる。
まるで母親のようだ(そんな事をされた記憶はないが)。
ごくり、と冷たい水が喉を通過するとぼんやりとしていた頭がすっきりとする。


「……頭痛い?」


首を振る。


「喉は?足とか手は?」


それにも首を振る。


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