学園マーメイド
見たくない、聞きたくない、それなのに体は言う事を利かない。
乾き始めた口がゆっくりと動き出す。
「なんで此処にいるの?……どうして過去を掘り出すの?もういいって言ってるのに」
息が荒くなる。
飛び出してきたあの日の記憶たちが一斉に私を目掛けて体当たりしていきた。
何度も何度も、痛々しい悲鳴を上げながら体中に浸透する。
苦しい、苦しい。そんな声を漏らしながら。
会いたくなかった、貴方なんかに会いたくなかった。
「聞いてくれ、蒼乃」
「いい加減にして欲しいって何度も言った。もう、関わりたく――」
最後まで言えないまま、頬には鈍い痛みが走った。
ぱん、と鋭い音を残して。
「…………」
暫くの沈黙。
頬はじんじんと痛みを残し、瞳はその痛みを作った原因の人物を追った。
―――…瞳の先には陸嵩。
そう、陸嵩が頬を叩いたのだ。
目が点な私と雪兎に陸嵩は真剣な眼差しを此方に向けた。
「いい加減にするのは蒼乃だよ。蒼乃、あんたは過去は未来のために捨ててく物って言ったけど、そうじゃない」
心臓が静かに脈を打った。