学園マーメイド
ぽたり、ぽたり、と床に落ちる雪兎の涙。
頭を上げず肩を震わす雪兎。
ああ、こんなにもこの人を苦しめていたんだ。
ゆっくりと彼に近づいて、そっと手を伸ばして肩に触れる。
肩に触れた瞬間、彼の体がビクリと揺れたが頭を上げることはなかった。
「ごめんなさい」
私の口から言葉が零れた。
「ごめんね、雪ちゃん」
あの頃に呼んだ名前が口をついて出る。
3人でいつもの様に笑いながら過ごしていた日々のように。
ごめんね、苦しめてごめんね。
何も分かってなかったのはこっちだった。分かろうとせずに、苦しんでいる貴方から逃げていたのは紛れもない自分だった。
「苦しめて、ごめん」
何の障害もなく飛び出てきた言葉。
その言葉に雪兎は未だに小さく震えながらも顔を上げた。
頬と瞳は涙で濡れているのにも関わらず、驚いたような顔をして此方を見つめている。
そして此方に腕を伸ばしてきたかと思うと、肩をがっちりと掴んで眉を寄せ、詰まった声を張り上げた。
「……っなんで!ごめん、……俺がごめん!お前が謝るなんて…っ、違うっ」
「雪ちゃん」
「違う…っ!ごめん、ごめん。うっ…、支えてやれなくて……、ごめ、蒼乃…ごめんっ」
顔をぐちゃぐちゃにして、必死に謝る雪兎の姿が昔の自分と被る。
息をするのも苦しそうで、呼吸も荒い。
私は自分の腕を雪兎の背中に回し、なだめる様に摩る。
身長も高く、肩幅も広い彼だがその時だけはとても小さく、そして幼く見えた。
抱きしめるような形になりながら口を開く。