キミと 夜空と 星空と。
そういい残して、天音さんはその場から離れようとした。
急に、抑え切れない不安で胸が満たされる。
気がつけば、俺は彼女の右腕をつかんでいた。
彼女は、驚いた表情でこっちを見ていた。
何か言おうと、さっきの倍頭をフル回転させるけれど、何も思いつかない。
結局、掠れた声で俺は適当に思いついたことを聞いた。
「・・・旦那さんは・・・?」
「あぁ、主人?あの人、忙しいのよ。
一週間に何回か家に戻ってくるだけなの。
忙しいなら一ヶ月に一回でいいって言うんだけど・・・君の顔が見たいからって言うの」
彼女は、幸福そうな笑顔で笑った。
いや、実際幸福なのかもしれない。
大手企業の社長の夫からの、惜しみのない愛情。
どんな人でも、幸福になるだろう。
そう思うと、もしかしたらなんて考えていた自分が惨めに思えた。